無名の劇団が舞台で集客する為に行った宣伝方法の実例と教訓

2019年9月4日

こんにちは、鈴木健人です。

立ち上げ初期の劇団が一番苦労するのって、何と言っても集客だと思うんです。作り手は「いい作品を作りたい」という考えで頭がいっぱいだし、宣伝集客に詳しい人ってなかなかいないので、「ところで集客どうするの?」という話になると、ちょっと気まずい感じになったりしますよね。

僕は一昨年・去年と2年連続で舞台公演を主催し、宣伝活動も率先して行ったんですが、これがなかなか上手く行かなくて、後から『マーケティングをしっかり勉強しておくべきだった』と深く反省しました。

これから舞台活動をする時に集客であたふたしないよう、参考にしていただければと思います。

 

事例

 

◀1作目『リコとマスカレード』

音楽イベントにゲストとして出展する為に制作された演目で、ライブハウスでの上演でした。

客席自体が非常に少なかったので、この時は本格的に宣伝しなくても満席になりました。

あらすじなど、公演自体の詳細はこちら↓
『リコとマスカレード』

 

◀こちらが2作目『マスカレードとカサンドラの吸血鬼』

客席は70席ほどに設定し、4ステージ上演しました。

この記事では、主にこの時の事例を使ってお話をしていきます。

 

公演自体の詳細はこちら↓
『マスカレードとカサンドラの吸血鬼』

 

 

 

集客の為にやったこと

まずは僕達が集客の為に実際にやったことを、成功も失敗も踏まえて振り返って行きます。

 フライヤーを自分で製作

フライヤーは2回とも自分で作りました。本当はデザイナーさんを雇いたかったのですが、予算がカツカツだったので、フライヤーの作り方やデザインの基本的な考え方を調べながらなんとか自力で作成しました。

今回のフライヤーの作り方

  1. サイズと大まかなレイアウトを決める
  2. 記入するテキストを決める
  3. 役者の写真を撮影
  4. フリー画像素材を集める
  5. Photoshop cs2で編集
  6. jpg形式で出力
  7. 画像データを印刷業者に送って発注

使用したソフト:Adobe Photoshop cs2

カメラ:HUAWEI P10lite

印刷業者:ネット印刷でお馴染みのラクスル

ラクスルは僕が知る印刷業者の中では一番安くて早くて確実です。これからもお世話になると思います。フライヤーを自作する予定がある方はラクスルのHPをブックマークに入れておくといいでしょう。



 

ポイント
  • デザインは見た目のインパクトと情報のわかりやすさを重視
  • 細かいレイアウトや配色は映画のポスターや商業演劇のフライヤー画像を参考にした
  • 発注枚数は4000枚(小劇場でも最低限これぐらいは必要)

 

舞台にとってフライヤーは一番重要な宣伝材料なので、せめてデザインでお客さんを逃してしまうことがないよう、細心の注意を払いました。その甲斐あってか、2回ともフライヤーを見て興味を持ってくれた方が結構いました。

 

街頭でフライヤー配布

『カサンドラ~』は東急東横線沿いの劇場での上演だったので、東横線が走っていて人通りが多い渋谷の街頭でフライヤーを配布しました。

ちなみに、道路というものは原則的に『移動』以外の目的で使ってはいけないことになっているので、フライヤーを配る時は所轄の警察署に道路使用許可を申請しなくてはいけません。

ポイント
  • 渋谷駅周辺で道路使用許可が降りるのは、井の頭線を降りてすぐ、マークシティの前だけでした
  • 1回の申請で最大2週間まで許可が取れます。1回で3000円弱かかります
  • どんなに人通りが多くても、滅多に受け取ってはもらえないので、心が折れそうになります

 

店頭にもフライヤーを置いてもらった

道路使用許可がもらえたのが夕方5時までだったので、5時を回ったらその足で渋谷を周り、飲食店や本屋さんなど、とにかく人がいそうな所に片っ端から営業をかけて、フライヤーを30枚ずつぐらい置いてもらいました。

ちなみに、大抵は断られますが、特に嫌な顔をされる訳ではなかったので、ちょっと安心しました。また、『お店に置くことはできないけど、個人的にもらっておきたい』と言ってくれる人も中にはいました。

ポイント
  • 書店は置いてくれるお店がまぁまぁ多かったです
  • 飲食店は、個人経営のお店が結構置いてくれました
  • チェーン店はだいたい『本部に聞いてみないとわからない』ということで、断られました
  • 当然ながら、きちんと挨拶して、事情を説明しましょう

 

ビルやマンションにも配った

ポスティングが禁止されていなければ、ビルやマンションの郵便受けにも配りました。演目がアンチヒーロー的というか、若干反社会的な内容だったので、法律事務所の郵便受けに入れる時は少し躊躇しました(最終的には入れた)。

ちょっと高いマンションになると、エントランスに受付の方がいることがあるので、きちんと自己紹介をして、ポスティングの許可をもらうようにしました。体感的には、OKなマンションとNGなマンションが半々くらいだった気がします。

 

職務質問されたら警官にも配った

この活動中、何度も警察から職務質問を食らいましたが、法的に怪しいことは何もしていなかったのと、道路使用許可を取る時に警察署にきちんと届け出をしていたので、全く問題ありませんでした。ついでに声をかけてくれたお巡りさんにもフライヤーを持っていってもらいました。

 

Twitterでも毎日宣伝

↓夜間一人稽古の様子

稽古の様子や舞台の見どころなどを、Twitterで毎日のように発信しました。↑こんな感じで、稽古終わりにいつも公園で一人稽古していたんですが、動きを確認する為に撮影していた動画をTwitterにアップしたら、意外と反応がもらえたりしました。

また、作品のテイストや雰囲気が近い映画のファンの方などを探し、1人1人DMを送ったりしました。

ポイント
  • 面識のない方にDMを送る際は、相手の都合を考えて、『興味がありそうな人』にのみアプローチします
  • テンプレ文を機械的にばら撒くようでは効果的でないばかりか、迷惑になってしまいます
  • きちんと相手を選べば、むしろ喜んでくれる人もいます

 

プレスリリースを報道機関に送った

プレスリリースを書いて、ステージナタリーなどの報道機関に送りました。結果、ある朝Yahooニュースの『ステージ』のトピックに載ったのでちょっとビックリしました。

プレスリリースとは

プレスリリースとは、報道機関への情報提供や告知のことです。舞台情報を専門的に発信しているサイトを調べてみると、情報提供窓口があるので、そこに公演情報や見どころなどを送信します。最初はハードル高く感じますが、送るだけならタダなので、やらない手はないと思います

注意点

報道機関も毎日大量の情報を整理しているので、掴み所のないプレスリリースは普通にスルーされます。プレスリリースを書く時は、何か『他にない』見どころなど、フックになる情報を仕込むことを心がけてください。また、プレスリリースを送ってから実際に情報媒体に紹介されるまで数週間くらいかかるので、かなり早い時期に送らないと集客効果は見込めません

 

ところが、結果は散々

ところが、フライヤー4000枚配って、SNSでの宣伝もこれだけ必死にやっても、実際に劇場に来てくれた人のほとんどは、役者の身内でした。完全に新規で来てくれたお客さんは、4ステージで10人程度。

もちろん、面識がないにも関わらず舞台を観に来てくれた方々にはとても感謝していますが、それとは別に、現実問題として『客席を埋める』ことは僕の責任なので、かなりの空席が残ってしまったことを深く反省しなければなりませんでした。

『こんなに頑張っても商業的にはダメなんだ』と、努力の量と結果の乖離に愕然としました。

そこで、マーケティングというものを真剣に勉強しようと決意しました。

 

やっておけばよかったこと

①マーケティングの勉強

まず一番『やっておくべきだった』と痛感しているのが、マーケティングを基礎から勉強することでした。マーケティングとは、簡単に言えば『売れる仕組みを作る』ことで、これをやっているかいないかで売上が何倍も変わってしまいます。

特に、僕達のようなクリエイター気質の人間は、「いいものを作る」ことにはエネルギーを注ぎますが、「売る」ことにはあまり関心を持たない傾向があります。

この、『作りたいものを売る』という順序で売り物を制作する考え方は、マーケティング用語で『プロダクトアウト』と言って、今の社会構造においてはあまり売れるやり方ではないと言われています。

対義語は『マーケットイン』と言って、『お客さんが欲しがっているものを作る』という考え方です。集客は商売の一環なので、主催者としてはこうした『マーケッターの視点』も持たないといけません。

僕も『本当にいい作品なら頑張れば売れる』と思っている部分があったんですが、この時初めて『販売には具体的な戦略が必要なんだ』と痛感しました。

お勧めのマーケティング入門

僕はマーケティングを学ぶ為に、まず最初に青春出版の『ドリルを売るには穴を売れ』を読みました。この本には、『人はどういう時にモノを買うのか』『どうすればそれは売れるようになるのか』ということがわかりやすく書かれています。

マーケティングの入門書として非常に好評なので、舞台を主催する立場の人であれば、一度は絶対に読んでおいた方がいいです。

 

②準備期間を長く取る

企画の発足から本番までの期間が半年程度しかなかったので、今思えば無茶をしてしまったなと反省しています。

例えばフライヤーは遅くとも本番の半年前には完成させておき、人々の目に触れる回数を増やすことを考えなければなりませんでした。人は一度見ただけの情報って5分で忘れてしまうんです。色んな場面で同じ情報を何度も目に入れることで、少しずつ印象が深くなっていきます。

そうして徐々に『最近あのポスターよく見かけるな。どんな舞台なんだろう?』と興味を持ち始める訳です。

せっかくYahooニュースにフライヤーが掲載されたのに、それが本番2日前とかだったので、お客さんの中に『Yahooニュースで知った』という方は1人もいませんでした。

 

③濃いファンを獲得する

もっと前から時間をかけて『この人の舞台なら面白そう』と言ってくれるファンを獲得する努力をしておくべきでした。

実の所、会ったことがない方で、遠くからわざわざ観に来てくれた方達もいたんですが、その方々は舞台の宣伝活動で僕を知った訳ではなく、オンラインゲームやSNSで交流のあった人達でした。

作品の存在を知らないお客さんにとって、興味を持つキッカケになる情報は『どんな作品か』よりも『誰から聞いたか』なので、企画を立ち上げるよりももっと以前から自分の人となりを知ってもらうことだったり、『面白い人だ』と感じてもらう活動をしっかりやっておくべきだったと思います。

ポイント

ブログやYoutubeは『知ってもらう』手段として非常に有効なツールです。扱いに慣れるまでは大変ですが、低予算で客商売をする訳ですから、乗り越えるべき壁です。

 

④ネタバレを恐れない

これは元々僕のスタンスではあるんですが、今の時代、『中身のわからないものは売れない』と言われていて、舞台においてもやはりネタバレを恐れずにどんどん情報を表に出すべきです。

演劇業界では今も『情報解禁までは何も言えない』という空気が根強いですが、内容を秘密にしていいのは『開けてビックリ』がお客さんの得になる場合のみです。そして、今時のお客さんはとても目が肥えているので、並大抵のビックリではほとんど動じません。

逆に『こんな面白い展開が待っている』と知らせた方が反応はいいです。実際、公演情報を伝えた時点で「その日はちょっと……」と言っていた方でも、重要なネタバレ要素を3分の2くらい伝えたら来てくれたりしました。

 

安易な値引きは禁物

ちょっと話は逸れますが、集客の為にチケットを値引きすることは絶対にお勧めしません。限定オファーであっても、チケットの値引きや無料提供などはほとんど集客に影響しません。

チケット代が万単位であればまた変わって来ますが、通常3000~4000円くらいの舞台であれば、『値段だけが障壁になっている』というお客さんはほとんど皆無です。

お客さんが舞台に支払う対価はお金だけではなく、スケジュールの確保や移動コスト、上演時間中じっと座っていなければならない労力、ひいては『つまらなかったら自分が損をする』というリスクなども同時に背負っています。

むしろ、舞台のお客さんにとってチケット代よりも大きいのはそういった物理的・心理的コストであって、『行きたくない』と感じている人が値下げを受けて『それなら行きたい』と考え直すことは滅多にありません。

それよりも、積極的に内容を開示したり、座席の座り心地を改善したり、便利な交通ルートを知らせるなどして、出来るだけ『お客さんが支払うコスト』を『舞台が提供するもの』よりも小さくする努力をするべきです。

 

 

まとめ

実際にやって得た教訓
  • 集客したければマーケティングの勉強は必須
  • 宣伝期間は最低でも半年以上取る
  • 作品よりも『自分』を知ってもらう活動を頑張る
  • 積極的にネタバレする
  • マーケティングは勉強する

マーケティングというと取っつきにくいイメージがあるかもしれませんが、マーケッターを雇ったり広告を大量に出稿する予算がない場合は、やはり主催者がマーケティングを勉強しておくのが一番というのが現時点での見解です。

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