演技にリアリティを持たせる為に演技初心者が押さえるべきこと

こんにちは、鈴木健人です。

 

演技をしていると「リアリティがない」とか「本物に見えない」とか言われることってよくありますよね。逆に『作りすぎないように』と思って普段の日常に近い喋り方をすると今度は「全然伝わって来ない」とか言われるし。

かと言って先生や演出の方に「リアリティって何ですか?」と聞くと適当にはぐらかされるとかってよくあると思うんです。

 

僕の考えでは、演技にリアリティを持たせる上で主要な要素を1つ挙げるとしたら、『意識の対象』が挙げられます。

人間の観察力というのは驚くべきもので、例えば若い男女が2人で楽しそうに歩いていたら『カップルだな』とわかったり、携帯で電話している人を見ただけで『仕事の電話だな』と察しがついたりします。

これは、人間の動向に『こういう気持ちの時はこんな顔をする』とか『こういう相手と話す時はこういう態度を取る』という、ある程度のパターンが存在し、それを無意識に読み取ることが出来る為です。

 

つまり、パターンを論理的に理解し、狙って再現することが出来れば、演技にリアリティが生まれるという仕組みになっている訳です。心のパターンには色々ありますが、今回は一番見落としがちな『意識の対象』についてお話しします。

 

心の動きは驚くほど論理的

『意識の対象』についてお話しする前に、心の論理について軽く触れておきます。

『論理』と『感覚』って相反する概念のように思われがちですが、実際には感覚(心の動き)というのは驚くほど論理的に働くように出来ています。

例えば、何かに驚いた時、人はその驚きの元になったものを目で見ようとします。それは、自分の心の状態と、新たに入って来た情報とのギャップを埋めようとする為です。そして、心の状態が新しい変化に追いつくと、目を離します。

このケースの一例

スーパーに買い物に行く途中、交差点を渡ったら、後ろから『バン!』という破裂音が聞こえました。そんな時は、音のした方を振り返り、何が起きたのかを確認するのが標準的な反応です。そして、音の正体が実は『子供が風船をうっかり割っただけ』だったら、驚きは消えて、元々歩いていた道を再び歩き始めます。

この例のような状況で、

  • 振り向きはするけれど、何が起きたか確認できる前に目を離す
  • 音の正体が風船だとわかったのに、まだ驚いた顔をしている
  • 音がした瞬間ではなく、1テンポ遅れて驚いている

といったリアクションをすると、いわゆる『リアリティがない』状態となります。これは、『音に驚く』→『驚きを埋める(確認する)』→『驚きが埋まったので元に戻る』という必然的な論理に反した行動だからです。

 

意識の対象は原則的に1つ

それでは今日の本題です。

人間が一度に意識できるものは、原則的に1つだけです。行動の対象と意識の対象が一致しない時は、いわゆる『気が散っている』状態となります。なので、基本的には『行動(または台詞)の対象』だけを意識する必要があります。

逆に、隠し事をする場面などでは、行動の対象ではなく『隠したいもの』を意識することで、自然と『何か隠している』という演技が出来るようになります。

ちなみに、演技においては、相手との物理的な距離だとか、台詞のタイミングだとか、顔を向ける方向や声の出し方など、一度に色々なことを考えないとけないので、「役が意識している」以外のことは、無意識に出来るようにならなくてはいけません。それが『基礎』です。

 

尚、2つのことを同時に考える役や場面であっても、通常は『Aを意識的に処理し、Bは無意識に処理する』『Aを処理してから、Bを意識する』という風に処理します。

 

このケースの一例

あなたの役は立てこもり事件の交渉人です。犯人は拳銃を持っていて、人質を取っています。あなたは『人質を救う』ことと『犯人を捕まえる』ことを同時に処理しなければなりません。

犯人が激昂している間は、『犯人を捕まえる』ことは無意識に処理し、『人質を救う』為に犯人を落ち着かせることに意識を集中させます。

その時、突然人質が逃げ出し、犯人に背中を撃たれてしまいました。あなたは犯人の視線が人質に向いた隙を突いて、『犯人を捕まえる』為に体当たりします。この時、『人質を救う』こと(傷の手当/救護要請など)は無意識に処理しています。

この例では、例えば人質が撃たれた時に、人質の心配をすることに意識を向けていると、犯人は台本通りあなたが体当たりして来るのを待っていなくてはいけないので、観客から見たら「何やってんだこいつら?」となる訳です。

『無意識に処理する』とは、言い換えれば『一旦忘れる』ということです

 

また、あえて初めから『犯人を捕まえる』ことにのみ意識を向けることで、『人質の安否はどうでもいいと思っている』という冷徹な人柄を演じるアプローチも考えられます。

何にしても意識の対象は1つです。台詞の言い方とか段取りのことを意識しているようだと、『この状況で犯人のことも人質のことも考えてない』という、いわゆるリアリティのない演技になってしまう訳です。

 

まとめ

今回は『意識の対象』を軸に置いて演技のリアリティについてお話ししました。

リアリティの要素はもちろんこれだけではありませんが、特に初心者の方は台詞や段取りを追いかけることに意識を持っていかれてしまって『行動の対象を意識できていない』ということがとても多いので、このお話をしました。

役としてではなく役者として考えなければならない部分は、意識せずに出来るようになっておきましょう。

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Posted by 鈴木健人