大塚明夫著『声優魂』を客観的に読んだ感想
こんにちは、鈴木健人です。
声優界の超大物、大塚明夫さんの著作『声優魂』を読みました。
僕自身は業界的には多分特殊な立ち位置にいると思うんですが、
とにかく今日は素直な感想を語りたいと思います。
声優だけはやめておけ
帯にデカデカと書かれた『声優だけはやめておけ』という強烈な一言は、
恐らく皆さんの印象にも残っているかと思います。
『声優魂』を実際に読んでみる前は、
「大塚明夫さんは声優志望者の覚悟を試している」
「発破をかけている」
という風に感じていました。
でも蓋を開けてみると、
95%ぐらい本音のようでした。
というのは、本の序盤の方に
『ここまで読んで声優の道を諦めたあなたは賢いです。このまま真っ当な社会生活を送ってください。
逆に、それでも自分は声優になるんだ! という決意を新たにしたあなた。
それは多分勘違いなので早く目を覚ましてください』
という趣旨の記述があったことからも窺えます。
声優という職業の現実
僕もブログやメルマガでさんざん語って来たことですが、
声優で食っていくって本当に至難の業なんですよね。
・声優は仕事が来るのを待つことしか出来ない
・大作に出演したからといって、人気が確定する訳でもない
・ある日突然仕事が来なくなるかもしれない
・ギャラや印税も充分とは言えない
といった、声優という仕事のシビアな側面を
著作の中で誇張も脚色もなく淡々と教えてくれています。
声優志望者の子達に僕が一番強調しておきたいのは、
やっぱり『お金が全然儲からない』という点。
夢に向かって突き進もうとしている人達に
『でもお金が』とかってあんまり言いたくはないんですが、
本当ぶっちゃけると
夢を諦める原因ランキングぶっちぎりのナンバー1が
『お金がない』
なんですよ……。
僕も夢を追いかけながら何度も何度も
それこそ血反吐が出るほどお金に悩まされて来た身なので
これだけは目を背けないで欲しいです。
ちなみに、著者の大塚明夫さんでさえ
キャリアの途中まで土木のバイトをしていたと述懐しています。
(完全に余談ですが声優志望者におすすめのアルバイトはこちら↓)
声優になったら普通の社会には戻れない
『声優魂』の中でもう1つ印象的だったのは、
『この道に入ったら、一般の生産社会にはもう戻れない』
というくだり。
この辺については僕も身を持って経験しています。
役者になろうと思ったら、
正社員として働く道はほぼほぼあり得ません。
僕なんかは高校卒業してすぐ工場に就職したんですが、
役者になろうと思ってレッスンに通い出したら
平日でも度々休まないといけなくなって、
ある日社長に「どっちかにして!」と言われてしまいました。
それ以来何年も演技を学ぶ傍らフリーターをやっていたんですが、
もう『芝居の道』も『社会人の道』も
みるみるおぼつかなくなっていくんですよ。
芝居に関しては人並み以上に努力はしたつもりですが、
芸事なのでどうしても才能や機運に左右されてしまうし、
何より『やればやるほどお金がなくなる』んですよ、この仕事……(笑)
かと言って『あ、俺やっぱ無理だ!』と気づく頃には
恐らくまぁまぁいい歳行っているはずで、
再就職すらも厳しいという状況。
あまりこの話はしないんですが、
色々あって1回は本気で自○考えました。
「このまま行き着く先は、どっち道ヤバい」
と思ったんです。
大塚明夫さんは『声優魂』の中で
『そういう覚悟のある人じゃなければ、この世界に入ってはいけない』
と仰っていました。
『それか、声優活動は一時の楽しい思い出として、ピークが過ぎたら生産社会に戻って普通に暮らすのもいい人生だ』
とも仰っていました。
どちらも概ね同意見です。
大塚明夫さん自身はなぜ声優になったのか?
『声優だけはやめておけ』と言いつつ、
なぜ大塚明夫さん自身は声優をやっているのかというと、
やはりお父様でいらっしゃる大塚周夫氏の影響が大きいようです。
大塚明夫さん自身は『親父と同じ仕事だけはするもんか』と思っていたそうですが、
学生時代から色々な(基本的には悪い方の)成り行きが重なって
役者の道に入っていったようでした。
生い立ちも時代背景も才能的な面についても、
極めて特殊な例なので、今の声優志望者にとって
『大塚明夫さんのやり方を見習って声優になる』
という余地はほぼ皆無です。
個人的な感想
業界の最先端にいる大塚明夫さんの言葉が、
僕が業界に対して感じていることと
だいたい一致していたので、
ちょっと安心した反面、複雑な心境になりました。
僕も声優志望者向けのレッスンをやっていますが、教え子達には
『声優を本業にするのはおすすめできない』
とはっきり言っています。
ただ幸いにして、今は誰もが複数の仕事を持つ時代です。
その1つに『声優業』が入っている分には何の問題もないと思っています。
記事の中盤でも書きましたが、
最大の問題は『儲からない』という部分なので、
お金の問題さえクリア出来れば声優活動は普通に楽しいです。
僕自身は、声優になりたい一心でお金やビジネスについて勉強しまくって、
それらの知識を組み合わせる形で声優業を立ち上げたので、
声優魂に書かれている通りの『声優』ではないかもしれませんが、
自分のペースで仕事が出来るようになったので
結果的によかったと思っています。
もし僕のやり方に興味がありましたら
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